悪人(上・下)/吉田修一
2010年 11月 21日
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映画化されて、深津絵里が賞をもらったことで注目されていたので、
映画も見てみたいなと思いつつ、先に本をお借りして読んでみました。
読み終わっての感想は『ふーん。なるほどね。』という感じ。
結構期待していたせいなのかは分かりませんが、私にはほぼ全体的にピンときませんでした。
会社で読んだ人5,6人に感想を聞いたのですが、口を揃えて「すごくよかった!」と申しておりました。
涙ぐんだ場面もあったと。
そう言われれば言われるほど『そんなことなかった!!』とアンチ発言をしてしまう私。
まず、主人公に共感できない。
人とうまく関われなくて、でも人と関わりたいと思っている。
気持ちはすごく分かるけど、かなり一方的。相手がたまたま受け入れてくれたらいいけど、
そうじゃなかったら完全なるストーカータイプ。相手の気持ちは完全無視ですから。
それぞれの気持ちで共感できる部分・・・たとえば、被害者の女性のお父さんが、
周りから娘が悪者扱いされても自分にとっては大切な娘。
殺されてやり場のない怒りと悲しみ。
被害者の女性を山に放置した男の友人が、友達を受け入れながらも疑問に思ったりする点。
(でも、その後の行動はどうかと思うけど)
これらはまぁうんうんと思いながら読んでた。
でも、全体的に無駄なエピソードが多かったように思う。
加害者のおばあさんのスカーフやバスの運転手と関わるシーン。
悪質な詐欺会社へ乗り込むところなんて、やりすぎだと思った。
昔に加害者がお母さんに捨てられたとき、竹輪をもらうところなんて、
わざわざ被害者との関りを匂わせて狙いすぎ。
最後の結末もちょっと意外性を出して、さて悪人とは誰だったか?と
色々読者に思わせて終わらせたかったのだろうが、
最初から最後まで『悪人』というタイトルに縛られすぎた気がした。
なぜか、自分があれこれ感じるように仕向けられている感じがして、「良かった!」とは素直に思えなかった。
後から、新聞に連載していた話だと聞いて、
こまごま分割して紙面に載せるために、さまざまなシーンを入れる必要があったのかなぁ?と、
ちょっと納得したけど、やっぱりそんなに好きな本ではなかった。
映画もあまり見たくなくなったので、どういう風にまとまっているのかは、
いつかDVDででも見られたらいいかなと思う。
[Amazon:悪人(朝日文庫)]
by reese8
| 2010-11-21 00:01
| 本